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海外就職経験者が見たシンガポール
~暮らす、働く、起業する~Vol.7


写真1:宇宙のようなシンガポールの植物園(ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ)

前回のコラムでは、シンガポールでの起業(法人設立)において重要な存在、カンパニーセクレタリーについてお伝えしました。
今回は、著者の実際の体験談を踏まえて、シンガポールにおける宇宙事業立上げプロセスを前半、後半に分けて綴っていきます。このプロジェクトは結果的に、新事業のアイデア出しから約1年で数億単位の売上をあげるまでになりました。
現在も存在する企業でのため、詳細にはお伝えできない部分がありますことを予めお伝えしておきます。

宇宙事業を立上げる始まり

2013年1月、シンガポールにある日系IT企業の決算業務を行う経理として入社をした私に社長は、「小さい頃からの夢だった宇宙事業を始めたい」、そう言われました。今まで全く関わりのなかった業界への突拍子もない思いに一時は驚きましたが、シンガポールで宇宙事業という響きに直ぐに「面白そうだな」と感じ始め、入社して数日後には、経理兼宇宙事業の立上げ担当として働くことになるのです。

1月 業界未経験者がどうやって、事業を始めていくのか

宇宙事業は国主体の事業、というイメージがありますが、現在では多くの民間が参入しており、ロケットひとつとっても日本の中小規模の製造業者や、ベンチャー企業など多くの民間会社が関わる時代になっています。しかし、社長も私も未経験者です。専門的な知識に長けているわけでもなく、技術を持っているわけでもありません。

私達がまず始めたのは、未経験のこの段階でどうやったら宇宙事業を推進していけるのか、行動しながら形にしていく方法でした。既存ビジネスのIT事業と同時に進めなければならなかったためその時実際にやったことと言えば、時間の合間を縫って、会う人、会う人に「宇宙事業をやりたい」と話していくことくらいでした。そうやって意見を聞きながら、大まかな事業内容を構想していったのです。

初めは、A4無地のコピー用紙にお絵かき程度でしか描けない時もあり、アイデアが煮詰まったときは、リバーサイド沿いのバーに行って、お酒片手に宇宙事業について話しあう宇宙づけの日々を送っていました。

シンガポールで法人登記を行うのは驚くほど簡単でスピーディーですが、逆に法人清算を行うのは、時間もコストもかかります。先に事業計画の中身をある程度見えるところまで作成した上で法人登記を行った私達のやり方は、今思えば最大のリスクヘッジとなっていたのです。
実際に法人登記を行った5月までは、事業計画を固める作業や、見込み顧客を探す期間が続きましたが、その間に思わぬ出来事がキッカケとなり最大の協力者が得られます。

3月 誕生日パーティーがチャンスとなる。


写真2:誕生日パーティーを開催したヨット・クルーズ

3月の社長の誕生日に、これまでお世話になったシンガポール在住の日本人の方々を招待してヨット・クルーズでの誕生日パーティーを企画しました。幸運にも、社長が既にお知り合いになっていた方の中には、政府関係者、企業の重役や、独立起業される方など、著名な方々が多くいらっしゃり、たくさんご参加頂けました。

意図して誕生日パーティーを企画したわけではありませんでしたが、余興や宴の合間に、何人かの方々に宇宙事業の話をさせていただいたところ、「面白そう」、「夢がある」、「自分自身も携わりたい」と前向きな反応をしてくれたのです。誕生日パーティーが思わぬ宣伝広報の場となり、クリエイティブの方が二人、行政関係の方が一人、協力者として加わったことにより、私達だけで考えていた宇宙事業も大きく拍車がかかりました。

前半のまとめ

今までのコラムでお伝えしてきたように、シンガポールは起業先進国であり、外国人企業も多く存在します。その大きな要因は、政府主導の強いリーダーシップの元、明瞭かつシンプルな戦略推進により、スタートアップの障壁を少なくして外国企業を受け入れているからです。

そして、もう一つ宇宙事業をはじめたことで見えてきたのは、シンガポールはキーパーソンである協力者を見つけやすい環境であるということ。シンガポールの全体人口約530万人に対して、シンガポール在住の日本人は約3万人であり、この人口が東京23区内程の小さな国土面積に住んでいます。とても凝縮されたコミュニティーであるため、仕事上のやり取りや、知人からの紹介などで簡単に繋がりをつくることができるのです。

さらに、住んでいるエリアも集中していることが多いので近所でお知り合いになるケースもあり、またパーティーも盛んです。つまり、日本に住んでいるだけでは到底お会いできない方々と会いやすい環境に恵まれているのです。恐らく起業を考えている方であれば、キーパーソンに繋がりやすい環境は、ビジネスを円滑に進める上での最大の魅力ポイントとなるのではないでしょうか。

次回は、法人登記をした後から実際に売上が立つまでの間に、今回できた人脈の輪の活用や、プロジェクトを創って売る方法などを交えて、どうやってこの協力者の方々と事業を進めていったのかをお伝えしていく予定です。

写真:

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