民族・言語・宗教
全人口の約8割がテュルク族系トルコ人で、その他、クルド人、アルメニア人、ギリシャ人、ユダヤ人等が存在する。
公用語はトルコ語。トルコ語はテュルク諸語に属する言語で、その他テュルク諸語同様、文法は日本語に近く、原則として語順は主語・目的語・述語の順になる。
イスタンブールなどの大都市ではトルコ語の他、ギリシャ語やアルメニア語、シリアとの国境付近ではアラビア語が話されている。
トルコ人の9割以上がイスラム教(スンニ派、アレヴィー派)だが、イスラム教以外の信仰の自由も保証されており、ギリシャ正教、アルメニア正教、ユダヤ教なども信仰されている。1923年の建国以来、政教分離がとられておりイスラム教は国教ではない。
地理・気候
トルコは地中海、エーゲ海、マルマラ海、黒海に囲まれたアナトリア半島に位置し、アジアからヨーロッパにかけて東西に長い国土を持つ。その国土中央には広大な高原地帯が広がり、高原東部を源流にディジュレ(チグリス)川、フラット(ユーフラテス)川が流れる。
トルコの国土周辺ではユーラシアプレート、アラビアプレート、アフリカプレート、アナトリアプレートの4つのプレートがせめぎ合い、またアナトリア高原北部を東西に横断する北アナトリア断層を始めとする複数の活断層が存在しており、マグニチュード6以上の地震がたびたび発生している。また、同じ地震国である日本のように、国内に数多くの温泉が存在する。
トルコの国土は東西約1,600km、南北約800kmと広大なため、地方によって気候帯が異なる。エーゲ海・地中海沿岸地域は、地中海性気候に属し温暖乾燥な気候である一方、イスタンブールのあるマルマラ海周辺等のヨーロッパ隣接地域は、地中海性気候と温暖湿潤気候の中間に属しており夏も涼しく冬には積雪もある。アンカラなどのある中央アナトリア地方は、ステップ気候や高地地中海性気候に属し夏場は乾燥して非常に高温になるが、冬季はマイナス20℃に達することもあり積雪も多い。東部アナトリア地方は、亜寒帯に属し冬の寒さは非常に厳しく1月の平均気温がマイナス10℃を下回る地域もある。
政治・外交・軍事
大統領を国家元首とする共和制国家。2018年、トルコ大統領及びトルコ大国民議会議員選挙が行われ、エルドアン大統領が得票率52.59%で勝利、共和同盟(与党・公正発展党(AKP)、民族主義者行動党(MHP))が全体で53.7%の議席を獲得し、議会の多数派となった。この選挙をもって、1923年の建国以来続いてきた議院内閣制は実権型大統領制へ移行し、首相職は廃止された。国会議員(定数600名、一院制)及び大統領はいずれも任期5年(2期まで)。
外交においては、トルコは欧州・中東・中央アジア・コーカサス地域を結ぶ要衝にあるため、多角的な平和外交を基調としている。NATO、OECD、OSCEの加盟国として西側陣営との協力体制を築く一方、上海協力機構の対話パートナーでもあり、中国・ロシアとの関係も重視している。さらには、アフガニスタンやミャンマー、ソマリアの復興支援への関与も深めているほか、メキシコ・インドネシア・韓国・オーストラリアとともに中堅国機構MIKTAとして協力関係を築いている。2005年10月から続くEU加盟交渉は近年停滞気味。
トルコ国民には兵役が課されており、身体障害などがない18~40歳のトルコ国籍の男性は全て対象となる男子皆兵制である。陸海空軍のほか、軍隊に準ずる兵力としてジャンダルマ(軍警察)、沿岸警備隊がある。総兵力は約38万人(陸海空軍)。
経済
トルコはその地理的メリットから市場としても生産・貿易拠点としても高い潜在能力を有しているだけでなく、豊富な人口・若年労働力、健全な銀行セクターといった強みを持ち、財政も比較的安定している。その反面、シリア・イラクと国境を接しているという地政学的リスクを抱えているほか、2018年には対米関係緊張化を受けたトルコリラ急落により、経済活動が減速した。
産業は伝統的な農業と、繊維・衣類業などの軽工業が中心である。主な作物は小麦、米、綿、たばこ、ヘーゼルナッツなどである。また、牧羊が盛んであることから、羊毛製品の世界有数の産地でもある。
トルコの国土は天然資源に恵まれており、石炭やマグネシウム、クロム、鉄、銅、ボーキサイト、大理石、硫黄などの鉱物を産出する。また石油・天然ガスについては黒海で開発を進め、中央アジア・コーカサスや中東地域からヨーロッパへの輸送の要衝としても注目されている。
トルコも日本や韓国と同じように、地場財閥が大きな影響力をもつ経済構造となっており、コチ(Koç)、サバンジュ(Sabancı)、ドウシュ(Doğuş)、ドアン(Doğan)といった財閥グループが、自動車、家電、エネルギー、食品、建設、小売、観光、金融など主要産業を牽引するコングロマリットを形成している。
トヨタ自動車を含む世界の大手自動車メーカーは、地場の大手財閥とそれぞれ合弁を組みトルコ進出を果たしており、それによりトルコはヨーロッパ向け自動車輸出が有力な外貨獲得手段となっている。また、日本企業のトルコ進出および現地法人化の動きは近年加速してきており、業種もこれまでの商社、建設、製造業に加えて、金融、食品、医療、報道・出版など多岐にわたっている。
トルコ政府は、建国100周年を迎える2023年までに世界第10位の経済大国になるという目標を掲げ、高付加価値分野の製造業の強化や、運輸・通信インフラの整備等を推進するとしている。
まとめ
- 面積:780,576km2(日本の約2倍)
- 人口:82,003,822人(2018年、トルコ国家統計庁)
- 首都:アンカラ
- 民族:トルコ人、クルド人、アルメニア人、ギリシャ人、ユダヤ人
- 言語:トルコ語(公用語)
- 政体:共和制
- 元首:大統領
- 主要産業:サービス業、工業、農業(トルコ財務省)
- 主要輸出品目:自動車・部品、機械類、貴金属類、ニット衣類
- 主要輸入品目:機械類、鉱物燃料、電気機器、自動車・部品
- 主要貿易相手国(輸出):ドイツ、英国、イタリア
- 主要貿易相手国(輸入):ロシア、中国、ドイツ
- 参考資料:
- 外務省HP トルコ
- Wikipedia トルコ
- Wikipedia チュルク語族
- Wikipedia トルコ軍
- トルコ共和国大使館 文化広報参事官室
- 株式会社国際協力銀行 『トルコの投資環境/2014年10月』
- 東京外国語大学トルコ語学科 『トルコの言語』
- 損害保険料率算出機構 地震保険研究 『No.12 海外地震保険制度~トルコ共和国2006年調査~』
- 中東協力センターニュース 中東情勢分析 『トルコ経済の現状と展望-カントリーリスクの観点から』
- SOMPOアセットマネジメント 『5分でわかる まるごとトルコ ガイド・ブック』
- 日本安全保障貿易学会第25回研究大会 『トルコ外交の基軸は変化したのか-2つの柱から3.5の柱へ-』
- 中東・イスラーム諸国の政治変動 『トルコ/現在の政治体制・制度』
- JETRO ビジネス短信 『エルドアン大統領、新政権の閣僚人事を発表』
- 株式会社国際協力銀行 新興国マクロ経済 『WATCH 建国100周年に向けたさらなる躍進を目指して』
- 三菱東京UFJ銀行 国際業務部 Global Business Insight March 27, 2015
- MIKTA HP
- 地図出典:
- 旅行のとも、ZenTech トルコ地方区分地図
- 写真出典:
- イスタンブール おじさんと猫
- カッパドキアの気球