World Map Asia

海外就職経験者が見たシンガポール
~暮らす、働く、起業する~Vol.4


写真:メイドたちの休日・シンガポール・パヤレバにて

これまでのコラムでは、シンガポールで外国人が起業をすることに焦点を当てて、多民族国家であること、インフラの基盤である交通事情が整備されていること、英語の実情を綴ってきました。今回は、シンガポールで暮らす、働くに焦点を当てて、メイド文化が根付いていることをお伝えします。

シンガポールのメイド文化とは

日曜日の昼下がり、公園やショッピングモールの広場はシートを広げてピクニックをしている女性たちで溢れかえっている。どうやらシンガポール人ではなさそう。実は彼女たちは国を離れシンガポールで働いているメイドたち。週1回の休日にみんなで集まって楽しんでいるのです。

シンガポールにはメイド文化がしっかりと根付います。しかし富裕層だけでなく、一般でも広く利用をしている人がいるという事実を知らなかった私は、この風景を初めて見たとき驚きを隠せませんでした。

また、当時の職場には半年前に出産したばかりの日本人女性がいました。仕事はフルタイムでこなし、同僚との飲み会にも参加。日本では見たことのない状況でした。私は単刀直入に彼女にそれが可能な理由を聞くと、「メイドさんが家事全般から、子どもの面倒まで見てくれている」ということ。異国の地でありながら、彼女はストレスフリーな育児を楽しんでいる様子でした。

メイド文化の背景・外国人メイド計画

それでは何故シンガポールでは、メイドがここまで普及しているのでしょうか?
その背景には、シンガポール政府の取組があります。

(1)外国人メイド計画

1978年シンガポール政府は、女性の労働人口を増やす目的で「外国人メイド計画」を立ち上げ、家事・育児をしてくれるメイドを外国から積極的に受け入れてきました。メイドはインドネシア、フィリピン、ミャンマー等の指定国から、雇用主のビザ支給のもと渡航してきます。待遇は基本的に住込み形式で、衣食住と医療費の提供。給与は4万円~6万円(額面)です。仕事の内容は、食事の準備から掃除、洗濯、育児、介護をやってくれます。

Ministry of Manpower(労働省。以下MOM)の数字(下記グラフ参照)では、メイド用の就労ビザ受給者は2016年12月には239,700人に上っており、その数は毎年増加しています。メイドビザ受給者の割合を、外務省発表によるシンガポール全体の人口561万人(2016年6月)で算出すると、約4%を占めています。


グラフ: Ministry of Manpower(MOM) Foreign workforce numbersより作成

シンガポールでは日本と違い産休はMax4ヶ月しかなく、女性は直ぐに社会復帰が求められています。日本のように出産育児に集中することができない一方、産休・育休によってキャリアを断念することなく働き続けられるというメリットもあります。そのため、富裕層だけでなく、中間層もメイドを利用しています。シンガポールではメイドを雇うことは贅沢ではなく、ごく一般的な生活の手段なのです。

シンガポールの中間層で雇用されているメイドの実際の姿が垣間見れるシンガポール映画があります。参考になりますので、皆さん機会があれば見てみて下さい。


シンガポール映画『イロイロ ぬくもりの記憶』

(2)メイドの受け入れ体制の改善

シンガポールではメイドを受け入れる体制も、「外国人メイド計画」立ち上げ当初と比べると変化を遂げてきており、今ではMOMによって、週1日は休みを提供することが義務付けられています。また、メイドの支援団体(Foreign Domestic Worker Association for Skills Training (FAST))も存在しています。FASTは、来星したメイドの孤独対策による電話相談や、自国へ帰国した後にスキルを活かして仕事ができるように、英語・パソコン等のスキルアップ講習を提供しています。

シンガポールメイド文化から

シンガポール政府のトップダウン政策の元、国全体にメイド文化が確立され、今やメイドはシンガポールにとって無くてはならないものとなりました。その流れで女性が働きやすい環境も整備され、女性の労働人口確保に繋がりました。そういった取組の結果、現在のような国の経済発展を得ることができたのです。遅ればせながらメイド受け入れを実施しはじめた日本は、シンガポールのメイド文化から今後学ぶべき点がたくさんあるのではないのでしょうか。

資料:

コメントはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)