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~甘い音と巡る世界の響き~Vol.10

不滅の巨人 ベートーヴェン

新年初となる今回は、クラシック音楽史上最大の巨人とも言えるであろう、ドイツの作曲家、ルードヴィヒ・ファン・ベートーヴェンについてです。年末には彼の第9番目の交響曲「合唱付き」を聴かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。あまりに偉大な音楽家ですから、今回お伝えできることはほんのわずかです。ですが、教養として知って頂いておいて損はないでしょう。

彼は1770年、現在のドイツのボンで生まれ1827年ウィーンで亡くなります。その間に作り出した作品、ピアノソナタ32曲、弦楽四重奏曲16曲、交響曲9曲(※)。この3つのジャンルが彼の主な偉大な功績と言えると思います。この他に5つのピアノ協奏曲、変奏形式のピアノ曲の数々、ピアノトリオ、ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、歌曲等々、天才の歩いた跡は現代においても我々音楽家の歩む道です。その作品と人生を少しご紹介しましょう。
(※交響曲とは、オーケストラのために書かれた組曲形式の音楽のことです。多くは、いくつかの部分から成り立ち、それぞれの部分は楽章と呼ばれます。)

作曲家。文字通り曲を作る人のことですが、一言で曲と言ってもいろんなジャンルがあり、様々なスタイルがあります。クラシックの作曲家で言えば、例えばショパンはピアノ曲がほとんどで、ピアノ以外の楽器の曲はわずかしか書いていません。モーツァルトはたくさんのジャンルを書いていて、交響曲もたくさん。それでいて彼のメインジャンルはオペラと言われています。
ではベートーヴェンはどうかと言うと、その人生は正に交響曲第9番「合唱付き」を書き上げるために生きた、と言っても過言ではないのではと思いますそして、それ以外の名曲の数々は、その道のりで生まれた副産物とも言えるでしょう。それではここでまずこの名曲をお聴きください。

交響曲第9番「合唱付き」、しばしば「合唱」と呼ばれるこの曲は演奏時間が1時間ほどになる長大な作品です。第1楽章から第4楽章までの4つの部分で成り立っており、有名な合唱の部分は、第4楽章。

この第4楽章での歌の歌詞が、詩人シラーによる「歓喜に寄す」です。
ベートーヴェンがこの詩を初めて知ったのは22歳頃の時だと言われています。
それは、第1番の交響曲を書くまだまだずっと前のことでした。大変感動し、この詩に曲をつけたい、と考えたそうです。
(余談ですが、同時代の詩人の作品に通じているとは、作曲家とはとても教養がある人達だなぁ、と思います。それだけの教養があったからこそ、歴史的な偉人となれたのでしょうが、改めて尊敬の念が湧いてきます。)

さて、先に書いた通り、ベートーヴェンは、交響曲の他にもたくさんのピアノ曲や弦楽器のための作品を書いています。

彼は、少し年上の先輩モーツァルトのような天才少年でもありました。
そして、モーツァルトと同じように、幼少からピアノの訓練を受けて音楽を学んだことから、ピアノは、彼にとって一番身近な楽器となっていたことと思います。
ピアノ曲の数の多さからわかることは、あらゆる実験や試作をまずピアノにおいて行ったということでもあります。

音楽的なアイディアを、ピアノで試してから他の楽器に書く、そのプロセスは以下のような順になっています。

①ピアノ
②ピアノを含む室内楽
③ピアノを含まない室内楽
④協奏曲(交響曲のためへの勉強)
⑤交響曲

実際、ピアノソナタ1番は1795年、ピアノトリオは1793年から1795年、チェロソナタ1番1796年、ヴァイオリンソナタ1番は1798年、弦楽四重奏1番は1798年から1800年、ピアノ協奏曲1番1798年、交響曲1番は1800年にそれぞれ書かれています。(チェロソナタとヴァイオリンソナタはピアノを含む室内楽です。)
弦楽器の曲が多いのは、オーケストラでは弦楽器が活躍するためです。ヴァイオリンを始めとした弦楽器は、メロディはもちろんのこと、実は伴奏も大得意なんですね。(オーケストラのパート譜の中でもヴァイオリンが一番ページ数が多いのです。)

こうして、彼は様々なアイディアを自分の得意とする楽器から他の楽器へと広げていくやり方で交響曲に近づいていきました。
多くの作曲家にとって、何種類もの楽器を大人数で演奏する交響曲は大きな目標の一つでもあります。例えば、ベートーヴェンのあとにウィーンで活躍した大作曲家ブラームスは、若い頃から名を馳せていたのになかなか交響曲を発表しませんでした。その理由を人から訊かれたときに「ベートーヴェンのあとに簡単に交響曲を発表できるわけがない」というふうに答えたと言います。ブラームスが交響曲を発表したのは、40歳のときでした。

ベートーヴェンは、54歳のときに交響曲第9番「合唱付き」を発表します。それは、彼がシラーの詩で感動してからおよそ30年後のことでした。実は、この曲の前にも、オーケストラと合唱が融合する曲をいくつか書いています。天才は試作に試作を重ねていたのです。

実際に、彼の作品を勉強していると、あるアイディアがまずピアノで書かれ、それから他のジャンルに広がっていく様を目の当たりにします。私は、この天才の歩いた跡を自分も勉強しながら、本当に感動します。

それでは、ベートーヴェンがヴァイオリンとピアノのために書いた作品の中から、最大の難曲でもあり人気も高いヴァイオリンソナタ第9番「クロイツェル」をお聴き頂きましょう。この曲については、また大変興味深いストーリーがあります。別の機会にそれについてもご紹介したいと思います。

動画:

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