民族・言語・宗教
アフガニスタンは、パシュトゥーン人(狭義のアフガーン人)のほか、タジク人、ハザーラ人、ウズベク人、トルクメン人などの数多くの民族が住む多民族国家である。人口の40%程度を占めるパシュトゥーン民族はパキスタン側にも多く居住しており、パシュトゥーン民族による国家「パシュトゥーニスタン」建設を目指す動きもある。そうした事情もありアフガニスタンおよびパキスタンの国境は両国において合意されたものとはなっていない。
公用語はパシュトー語とダリー語。ダリー語はペルシャ語の方言とされているがあまり違いは無く、両者の意思疎通は問題なく行なわれる。パシュトー語は当然の如くパシュトゥーン民族を中心に使用されることが多いが、カブール等都市部では多くの国民がダリー語とパシュトー語の両方を理解する。
宗教はイスラム教。主にスンニー派のハナフイ学派であるが、ハザラ人はシーア派を信仰。その他には、シーク教徒、ヒンドゥー教徒、キリスト教徒が存在する。イスラム教から他宗教への改宗にはかつて死刑が適用されたが、2006年、ドイツでキリスト教に改宗した人の死刑判決に対し国際的非難を浴び、この法律は撤廃され、現在は布教活動も許されるようになった。
地理・気候
アフガニスタンは、パキスタン、イラン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンさらに中国に囲まれる内陸国。南部は砂漠、北部・南西部には平野がある。国土の4分の3は山岳地帯であり、最高峰は海抜7,485mのノシャック山。また国土の大半は乾燥しており、真水の入手できる場所は限られている。
気候は大陸性で、夏は暑く、冬は寒い。また地震が頻繁に発生している。首都カブールの気候は、4月~11月の乾期と12月~3月の雨期に分かれる。5月から8月にかけてはほとんど雨が降らず、気温も摂氏30度から40度となる。他方、12月から2月にかけては冬となり、積雪があり気温も氷点下10度程度まで下がることもある。
政治・外交・軍事
国家元首は大統領。任期は5年で3選禁止。国民の直接選挙で選出され、強力な指導権を憲法により保障されている。ムスリム以外は大統領になることができない。首相格として行政長官が設けられている。
議会は二院制。上院(長老議会)は、定数102議席で、県議会(任期4年)及び郡議会(任期3年)から選出される各34名と大統領が指名する34名(任期5年)で構成される。下院(人民議会)は、任期5年、最大議席数250、現議員数は249となっている。
アフガニスタン軍(Afghan Armed Forces)は、アフガニスタン国民陸軍(Afghan National Army)とアフガニスタン空軍(Afghan Air Force)により構成される。内陸国であるため海軍は存在しない。兵員数は、2014年の時点で195,000人。
現在のアフガニスタン軍は、2001年のアフガニスタン侵攻によりタリバン政権が崩壊した後、国際社会によって再建された組織である。現在、装備の近代化や兵員の増強が進められているがアフガニスタン軍だけで反政府武装勢力と戦うにはまだ問題も多い。かつてはNATOを中心とするISAF(国債治安支援部隊)がアフガンに展開して直接的な治安活動を支援、2015年以降はNATOによる訓練、支援が行われている。
経済
アフガニスタンでは、20年以上の内戦を通じて経済社会インフラが壊滅的な打撃を受けたが、タリバン政権崩壊後、国際社会の支援を通じて復興が進展。これまでに国家統治機構整備プロセスが完了した他、避難民の帰還(500万人)、教育(就学人数が100万人以下(2001年)から800万人(2011年)等の分野で改善がみられている。他方、同国は依然として最貧国であり、今後の復興・開発に不可欠の基礎的インフラは未だ未整備の部分が多い。
アフガニスタンは国家予算の約7割を国際援助に依存しており、国民の3分の2は、1日2ドル以下で生活し、国民の多くに食料、衣料、住居、医療施設が不足している。失業率も極めて高い国であり、ネパール、レソトなどと同じように、40%を超える。
世界最大のケシ(麻薬の原料)生産国であるアフガニスタンでは、南部、南東部のほか、これまで栽培面積が縮小していた北部でも治安悪化とともにケシ栽培が増加しているという報告もあり、反政府勢力の主要な資金源となっている。ケシは農家にとって生産性の高い魅力的な生産物であり、干ばつなどにより収入が減少するとケシ栽培に手を出さざるを得ないという経済的な事情もあり、根絶が難しい。
古くからアフガニスタンには世界最大規模の各種金属、希少金属、貴金属、宝石を含有する豊富な鉱脈が数多く存在することが知られており、インフラの整備や権益の開発が進めば資源企業に莫大な富をもたらすと考えられている。
まとめ
- 面積:652,225km2(日本の約1.7倍)
- 人口:2,860万人(2015年、2015-16年推定値、2014-15年アフガニスタン中央統計局 Afghanistan Statistical Yearbook)
- 首都:カブール
- 民族:パシュトゥーン人、タジク人、ハザラ人、ウズベク人等
- 言語:公用語であるダリー語、パシュトゥー語の他、ハザラ語、タジク語等
- 宗教:イスラム教(主にスンニー派のハナフイ学派であるが、ハザラ人はシーア派)
- 政体:共和制
- 元首:アシュラフ・ガーニ大統領
- 主要産業:サービス産業、農業、鉱工業・製造業
- 主要輸出品目:じゅうたん、レーズン、ピスタチオ、甘草、羊毛、干しイチジク、アーモンド、羊皮等
- 主要輸入品目:石油、セメント、鉄棒、電化製品、小麦、機械類等
- 主要貿易相手国(輸出):パキスタン、インド、トルコ、イラン、ロシア、アラブ首長国連邦
- 主要貿易相手国(輸入):パキスタン、アラブ首長国連邦、イラン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、中国
- 参考資料:
- Wikipedia アフガニスタン
- 外務省HPアフガニスタン
- JICA 各国における取り組み アフガニスタン 民族・言語
- JICA 各国における取り組み アフガニスタン 地理・気候
- JICA 各国における取り組み アフガニスタン 政治
- JICA 各国における取り組み アフガニスタン 経済
- Wikipedia アフガニスタンの軍事
- 地図出典:
- 旅行のとも、Zentech アフガニスタン地図
- 写真:
- Four Girlfriends by Lauras Eye
- IMG_2540 Kabul by Ninara