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Our World through Music~
甘い音と巡る世界の響き~Vol.33

オペラ?フォアグラ?ロッシーニ風!

今回は、音楽家でもありグルメでも有名な人をご紹介します。
音楽家、そして美食家ロッシーニ。グルメ史にも名を残しています。今回は音楽は少なめですが、そのぶん彼の生涯をお伝えしましょう。

ジョアキーノ・ロッシーニ(1792~1863)。イタリア、ペーザロ生まれ。市役所でトランペットを吹き屠牛場の監督もした父親と町一番の美しい母親の元に生まれました。

では、まずこの曲をお聴き下さい。
歌劇『ウィリアムテル』より「スイス軍の行進」

ロッシーニの父親は、血気盛んな人で役所に務めながらも政治活動も盛んに行いました。折しもナポレオンの頃です。イタリアの人々も自由や独立を望み、活動のため父親は投獄されてしまったほどです。その後家計のため両親とも地方巡業に出かけ、その間幼いロッシーニは親戚の家やボローニャの豚肉屋に預けられていました。

幼い頃のロッシーニの逸話として有名な話は、
「何者かが教会に忍び込んで聖なるワインを飲み干してしまった」
というものです。このときロッシーニはおよそ6、7歳。そう、犯人は少年ロッシーニなのです!
尚、ロッシーニの名誉のためにお伝えするとこのとき共犯者の少年がいたそうですが、彼の後年の飲みっぷりを思うと名誉も何もないように思います。

貧しいながら母の教育と裕福な一家との交流からロッシーニは音楽を習い、ボローニャ音楽学校に進みました。在学中に歌劇の作曲依頼に応え、オペラ作曲家としてデビュー。当時作曲家を目指すのならばオペラでヒットしないと食べていけないといわれていた時代です。若いオペラ作曲家ロッシーニはそのあとも数々のヒットをとばし、イタリアのみならずウィーン、そしてパリでも大人気。そのくらい楽しく分かりやすい曲を書いた、ということです。

ところで、ロッシーニの時代にはウィーンに大作曲家がいました。その名もベートーヴェン。第九の歌や、あの「ジャジャジャジャーン!」、その他「エリーゼのために」やピアノソナタ「月光」など枚挙に暇がありません。
ロッシーニは、ウィーンでベートーヴェンと会い、その音楽に接した際に、本当の芸術を感じ、それが世の中になかなか受け入れられないことに涙したそうです。冒頭に書いた「今回は音楽は少なめ」というのはそういうことで、ベートーヴェンの音楽は時代を超え国境を超え、日本の我々でも楽しむことができますが、ロッシーニは自分の音楽はそこまでのものではない、ということをよく理解していたようなのです。

それでいて、当時としてはベートーヴェンより客入りが良く遥かに高額なギャラを手にできるという現実。このためロッシーニは、ベートーヴェンに寄付できる演奏会を企画しようとしましたが周囲が動いてくれず実現しませんでした。

それほど売れに売れたロッシーニですが、売れっ子ならではの悩みや苦労は尽きません。サインや手紙、それに何より作品です。彼はそれに疲れたのかなんと作曲家をやめてしまいました!

幼い頃に豚肉屋に預けられ、各地に音楽旅行をし、行く先々で名士や王侯貴族に愛されその舌も成長したロッシーニ。

「きのこのモーツァルト」ロッシーニがトリュフに名付けた呼び名です。モーツァルトと言えば軽やかでセンスたっぷり楽しい音楽でありながら人生の深みを感じさせてくれる。そういうイメージでしょうか。

「ロッシーニ風」どこかで見かけたことがおありでしょうか?そう、トリュフとフォアグラの組み合わせによる料理をそう呼びます。

何よりマカロニ料理が得意で、それまでパリで嫌われていたマカロニのイメージを一新するほど人々がロッシーニのマカロニを食べたがったとか、一目見ただけでパスタの産地を言い当てたとか、オリーブにしろワインにしろ彼は舌にも感性がありました。

音楽と料理。その両面で「活躍」したロッシーニ。彼の土曜日の晩餐会にはあらゆる名士が集まりその中にはパガニーニもいたそうです。バルザックも親しく、スタンダールもロッシーニのグルメについて言及しています。

また、実はこう見えて父親譲りの政治的精神から、引退後に祖国でイタリア民族のために作曲をしたのちにパリの二月革命の影響から民衆が王侯貴族などの権威寄りに見えるロッシーニにひどく罵声を浴びせたり、など精神的に辛い出来事もありました。
とはいえ、最期は美食家らしく妻に看取られて亡くなります。

最後に、ロッシーニの有名な音楽をお送りしましょう。
歌劇『どろぼうかささぎ』序曲

画像:
Tournedos Rossini with Truffle Madeira Sauce,トゥルヌド・ロッシーニ(牛ヒレ肉のロッシーニ風)。牛ヒレ肉、フォアグラ、トリュフ。(出典:Wikimedia commons
動画:

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