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Relationship ― ミャンマーと日本の『時間軸』を辿る ~ミャンマーとの友好関係の構築・・・テイン・セイン政権期

再開された日緬関係

テイン・セイン政権が世界の信用を得ながら徐々に再び国際社会の表舞台へと戻りつつあるとき、アメリカや欧州による経済制裁の一部緩和を機に、日本も動き始めます。

日本とミャンマーの関係は、これまで人道支援並びに既契約の事業については行ってきていたものの、新規事業については全くの手つかず状態でありました。折しも2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響もあり、政府の最優先課題は被災地の復興、原発の安定化であり、ミャンマーとの外交関係構築は制裁解除があったとはいえすぐに取りかかることは出来ませんでした。

因みにその時のミャンマーへの経済協力方針は、『民主化及び人権状況の改善を見守りつつ、民衆が直接恩恵を受ける基礎生活分野の案件を中心にケース・バイ・ケースで検討の上、実施する』というものでした。


写真1:2012年来日時の
ワナ・マウン・ルイン・ミャンマー外務大臣

2011年10月21日にはミャンマーからワナ・マウン・ルイン外務大臣が訪日。ミャンマー国内の開発支援に向けての協議が行われたことによって、大東亜戦争からなんとか繋がっていた日本とミャンマーの信頼関係が再び動き出します。

この状況は数字にも明らかに現れています。外務省の資料によれば、対ミャンマー経済協力として日本政府から無償資金提供された金額を見てみますと、2011年度は約46.4億円止まりだったものが、2012年度には277.3億円と一気に増加し、2011年度には無かった円借款も、2012年度は1,989億円と、こちらも急激に大きな資金が援助されています。

日本の資金協力によるミャンマー国内整備事業

当時の日本は、2012年末まで政権運営を行ってきた民主党から再び自民党へと政権が戻った時期でした。安倍晋三内閣総理大臣がアジア地域で最初に訪問した国がミャンマーであったように、政権交代後も引き続きミャンマーへの支援を厚くし、また大きな資金協力を得たミャンマーは、日本の協力方針に従って数々の国内整備事業に着手していきます。ここでその事業の中から数点ご紹介いたしましょう。

まず新事業ではありませんが、これぞ日本とミャンマーの信頼の証ともいえるものは、バルーチャン発電所の補修協力です。


写真2:バルーチャン発電所

日本からミャンマーへの資金協力は、1954年に署名された日本とビルマ連邦との平和条約や賠償と経済協力に関する協定によって始まりました。 
この発電所はその戦後賠償協力案件の一つとして1960年に日本の鹿島建設株式会社が中心となって建設し、現在も稼働するミャンマーの国民を支える重要な発電所です。まもなく完成から60年となりますが、補修に関する事業は日本の技術協力と資金協力によって行われています。

次に、サイクロン「ナルギス」被災地小学校兼サイクロンシェルター建設計画です。


写真3:サイクロンシェルター
機能付き小学校

2008年にミャンマーを襲ったサイクロン「ナルギス」。その被災した地域の復興事業の一環として、被災地小学校の再建と、学校施設を災害時のシェルターとして利用できる形への移行推進事業を行っています。

元々2009年からJICAを中心として再建事業は行われていましたが、2012年には、被害が大きかったエーヤワディ地域のラブタとボガレ地区で、シェルター機能を持つ小学校13校の建設を支援しています。2013年にサイクロン「マハセン」が襲来した際には、このシェルター機能付き小学校へ住民が避難するなどして活用されました。

そして一番注目されてきたティラワ経済特別区(SEZ)開発事業です。


写真4:ティラワ経済特別区

この事業は、「パッケージ型インフラ事業」として日本が官民を挙げて進め、ヤンゴン中心市街地から南東約23キロメートルに位置するティラワ地区約2,400ヘクタールに、製造業用地域、商業用地域等を総合的に開発する事業です。日緬合弁の開発事業体が2013年11月から工事を開始し、2015年9月から運用管理を開始しています。

更に2017年12月からは工業団地拡張に伴う工事を開始、今年8月に完成予定です。
このように日本は、ミャンマーがアジアおよび世界の貿易・物流拠点となるよう産業を育成し、また国内経済活性化の大きな足がかりとなる事業に協力をしています。

こうして、民主化宣言後下された制裁の一部緩和に伴いミャンマー経済は大きく動き出しましたが、国としてもう一つ起こさなければならない大きな動きが残されていたのです。

(続く)

資料:

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