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Our World through Music
~甘い音と巡る世界の響き~Vol.1

世界の歴史と文化の一部であるクラシック音楽

皆さん初めまして。
私はヴァイオリニストで、クラシック音楽の演奏と指導を専門としています。主に首都圏で活動を行っています。

皆さんは、クラシック音楽に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?
恐らく、バッハやモーツァルトという作曲家の名前はご存知でしょう。そのバッハの音楽には、18世紀ヨーロッパでコーヒーが流行った背景から作曲された「コーヒー・カンタータ」という作品があり、またモーツァルトの作品に有名なピアノ曲「トルコ行進曲」があるように、その名の由来から当時ウィーンでトルコ文化が流行したことがわかります。

クラシック音楽も世界の歴史や文化の一つです。
この連載では、私の演奏活動における作品から一般にはあまり知られていない背景をお伝えできたらと思います。
さあ、音楽を通じて世界をご紹介しましょう。

フランス音楽とロシア音楽について

初回となる今回は、フランスとロシアの音楽です。

ロシアは、中世の時代には西欧とは違う独特な民族的な音楽で満ちていましたが、17世紀にピョートル大帝がサンクトペテルブルクを建ててから、フランス文化が大流行しました。そのあまりの流行ぶりにロシア国内では批判する人も出たほどです。
上流階級たちはみなフランス語を話し、文学や音楽もフランスの影響を多大に受けました。

ここで、20世紀のロシアの大作曲家プロコフィエフの短編集から抜粋します。

~ママはたいそう気落ちして、パパと書斎に閉じこもり、ターニャにフランス人か英国人の女家庭教師をつけないとならないが、それにはいくらかかるだろうか、などと話し合っていました~

(群像社「プロコフィエフ短編集」から「毒キノコの話」より。サブリナ・エレオノーラ/豊田菜穂子訳)

フランス音楽については、逆に、ロシアの作曲家の作品からフランスの作曲家が大きな影響を受けたことも多々あったようです。
例えば、フランスのドビュッシーは若い頃、まだ作曲家として大成する前にロシアのチャイコフスキーが書いた交響曲の楽譜をいくつか目にしており、その感想は、賛否両方であったようです。

そしてなんといっても、クラシック音楽史上でもかなりのスキャンダルとなったロシアのストラヴィンスキー作曲「春の祭典」パリ世界初演。これには、多くのパリっ子たちが軒並み大変な影響を受けたといいます。

彼らが受けた影響というのを、単純に言葉にすることは難しいですが、もしそのことがなかったならば、その後のフランス音楽シーンはかなり違う作風で満ちていたのではないでしょうか。良くも悪くも非常に刺激的であったと想像されます。

演奏曲について

この度2018年5月20日に私が出演する演奏会では、このフランスとロシアの音楽を演奏します。
歌の作品とヴァイオリンソロ。

フランスの作品として、プーランクの歌曲。この人は、先述のドビュッシーの作品を多数初演したビニェスというピアニストに師事しています。そしてプーランクは「フランス6人組」の一人です。彼らは、様々な海外文化との交流により影響を受けることで、逆に自分たち本来の価値観や感性を大事にしようとした作曲家グループです。

ロシアの作品として、ラフマニノフの歌曲。プーシキンによる詩です。プーシキンは現代ロシア語を確立し、その文芸作品は数多く歌曲やオペラに用いられました。
さらには、ロシアの国民楽派「ロシア5人組」の一人リムスキー・コルサコフのオペラ「雪娘」のアリアも演奏します。

今挙げたほかに、ロシアのロマンス(フランスのシャンソンがロシアに輸入され貴族サロンで歌われるようになったときに、ロマンスと言われるようになったと言います)や、ゲーテの「ファウスト」をフランスのグノーがオペラ化した作品。
ヴァイオリンのソロでは、ロシア人ラフマニノフの「ヴォカリーズ」や「リラの花」、フランス人作曲家マスネの「タイスの瞑想曲」など。

ちなみに、リラの花とは英名でライラックのこと。リラとはフランス語読みですが、ロシアでもリラと呼ばれているようですね。チャイコフスキーのバレエ作品「眠りの森の美女」にも重要な役割としてリラの精は出てきます。
など、語れば尽きない文化的な作品たちを他にも演奏します。

参考までにラフマニノフ「リラの花」の演奏動画をご紹介します。

日本人にも気持ちが通いやすいと言われるロシア。
そのロシア音楽に見えるのは、広大な大地、土埃が舞うかのような熱気のある人の心と凍てつく氷のような寒さ。このように寒い土地にいるからこそ想いは熱を帯びたのに違いない、と初めてロシア音楽に触れた幼い頃からその印象は変わりません。

対して、フランスの音楽はいつだって軽やかな表情です。
時にクール。お洒落で優雅。一見熱を感じないくらい、作曲家によってはあまりにクールでお洒落。
ですが、私はそこまで徹底する根底の精神に熱を感じる。そこがかっこいい。
これはもしかしたら、きっとずっと手が届かないであろう憧れの対象なのかな。。弾く度にそう思います。

歴史を経ながら、今なお響き続ける音楽たち。時代を超えたその響きをコラムと演奏会でご一緒できれば幸いです。

動画:

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