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海外就職経験者が見たシンガポール
~暮らす、働く、起業する~Vol.5


写真:シンガポールのオフィス街の風景

これまでに、経済発展を遂げた背景について、またそのためにシンガポール政府が行った国策についてお伝えしてきました。まずは、自国の不利を補うため外国人を招き入れることを決め、国の経済発展に欠かせないインフラ基盤となる交通環境整備。言語の壁を取りはらい、英語を公用語としていること。また、女性の社会進出の為、メイド文化を根付かせたことなどを綴ってきました。

これらの内容を踏まえつつ、今後数回にわたって、シンガポールでの起業(法人設立)についてお伝えしていきます。海外進出先として多くの人に知られているこの国の動向から、海外で会社を作ることとは、一体どういうことなのか考えてみたいと思います。

シンガポール進出を求める人たち

シンガポールで仕事をしていた4年前、日本から視察にやってくる方々の現地アテンドに同行した経験があります。誰もが知っている大手企業から、これから事業を始めるベンチャー企業まで、私が同行した1年間だけでも、業種、業態や企業規模問わず、実に様々な会社が何社もやってきました。実態を求めて話を聞くのに、わざわざ日本から7時間もかけて来星する。その姿を目の当たりにして、「何故、こんなにもシンガポールに会社を作ることを思慮している人がいるのだろうか?」と漠然と不思議に思っていたものです。

それでは、どうしてシンガポール進出を考える企業が多いのでしょうか?
その理由は、ビジネスがしやすい環境があるからです。

(1)世界ランキングから見る、シンガポールのビジネス環境

表1)ビジネスがしやすい国ランキング
Rank Economy DTF score
1 ニュージーランド 87.01
2 シンガポール 85.05
3 デンマーク 84.87
4 香港 84.21
5 韓国 84.07
6 ノルウェー 82.82
7 英国 82.74
8 米国 82.45
9 スウェーデン 82.13
10 マケドニア共和国 81.74
34 日本 75.53
(出所)世界銀行グループ 「Doing Business 2017」2016年10月25日発表

世界銀行グループが毎年まとめる「ビジネスがしやすい国ランキング(Ease of doing business ranking)」で、シンガポールは常に1位、2位を争っています。その理由は、これまでのコラムで示した通り、政府主導による共通言語が英語であること、インフラの整備等があげられます。また多くの人が「シンガポールは税金が安い」と認識している通り、法人税は17%です。日本は、法人税に加え、法人住民税、法人事業税がかかってくるため、実効税率約30%となり両者を比較するとかなり低い税率です。また、税制上のメリットや優遇措置があります。

現在シンガポールにある日本商工会議所の会員数は、836社・個人(2017年1月現在、JCCI統計)あり、様々なメリットを活かし多くの企業が進出していることが窺えます。

(2)スタートアップ向けの税制優遇措置

表2) 新スタートアップ会社税額免除制度
課税所得 税免除(%) 税免除額
First $100,000 100% = $100,000
Next $200,000 50% = $100,000
Total $300,000   = $200,000
(出所)シンガポール税務当局(IRAS)ホームページ
「Tax exemption scheme for new start-up companies」

シンガポールでは、スタートアップした企業に向けて、2005 賦課年度から新スタートアップ会社税額免除制度(Tax Exemption Scheme for New Start-Up Companies)が導入されています。この税制度の優遇措置において、設立から3年間は税免除を受けることができます。具体的には、通常の課税所得のうち、最初のSGD100,000(約800万円)の100%を、次のSGD200,000(約1600万円)に対して50%が免税となり、合計でSGD200,000(約1600万円)の税免除を受けることができるのです。

(3)スタートアップ企業向け施設

また、シンガポールではスタートアップ企業に対し、税制面以外の優遇も積極的に取り入れているのが特徴です。例えば、2011年シンガポール政府がスタートアップ起業家のために改装した施設「The JTC LaunchPad @ one-north」では、シンガポール会社設立5年以内の企業を対象に、研究施設、会議室、イベントホール等の貸出を行っています。約500社の企業が入居し、2017年には施設収容能力を750社まで拡張する予定となっています。

シンガポールで起業をすることで、その先の未来へ

外国人を多く受けいれているシンガポール。インフラや共通言語の英語など、ビジネス環境が整っているほか、スタートアップをする企業への優遇措置もあります。また、地理的条件も考慮してインドネシア、タイ、マレーシア等の近隣国への市場拡大に向けたハブ拠点として、シンガポールにオフィスを置く企業も多くあります。

デメリットとしては家賃や従業員への支払賃金の高騰等があげられますが、その先に広がる市場獲得を天秤にかけてシンガポール進出を試みる企業が多いというのが実態ではないでしょうか。

日本でも、働き方の改革が進んでいます。シンガポールでのこの働きやすい環境を利用して、大手企業だけでなく、個人レベルでもシンガポール進出をする人がどんどん増えていく。そんな未来は意外と近くにあるのかもしれません。

資料:

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