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海外就職経験者が見たシンガポール
~暮らす、働く、起業する~Vol.2

『皆さんがもし国を作るリーダーだったら、その国の発展にまず何が必要だと考えますか?』

1965年独立を余儀なくされたシンガポールが国の発展のためにとった戦略は、『外国人を招き入れて、外貨を流入させることで国を発展させること』でした。今回は、外国人を呼び込むための基盤となるもの、そして国の発展に大きな影響を与えるインフラについてお話をします。

シンガポールは生活基盤である電気、ガス、水道、インターネットの供給が安定しており、他のアジア諸国と比べて、何不自由なく生活することができます。まさにインフラが整っている国です。
では、生活面だけではなく、ビジネスの視点で見た場合、インフラを整えることにどれほどのメリットがあるのか考えてみましょう。様々なインフラの中でも、シンガポール独自のシステムを導入している交通事情に焦点をあててご紹介します。

経済活動を止めないために、徹底的に渋滞を避ける

シンガポールの経済活動にとって、交通渋滞を起こさないことは必要不可欠です。交通が滞ってしまうということは、他の国からの物資を運ぶことができなくなるということを意味します。そうなると物もお金も上手く流れず、経済活動の循環がストップしてしまいます。

そこで、渋滞を避けるために、シンガポールでは斬新な3つの取組みを行いました。

取組み①:自動車保有の制限

シンガポールでは、まず車を保持するために車両所有権利書(Certificate of Entitlement)を買う必要があります。その発行は政府によりコントロールされ、枚数も調整されています。また、権利書の購入とは別に、車の購入代金が日本と比べて3倍程かかり、更に税金などがかってくるため全体的な費用が高額となります。一般的に税金が安い国として知られているシンガポールですが、国の繁栄のためにと政府が判断したところには、徹底的な管理がなされているのです。

取組み②:渋滞緩和課金システム(ERP)の導入

渋滞を更に減らすため、シンガポール政府は一般道路に対して交通量が多いときほど通行料が高くなる課金システム(ERP)を導入しています。これによりシンガポールではすべての車にERP装置を装備する必要があり、混雑している道路を走行したら自動課金されるようになっています。この料金は数分ごとに変動し、より混雑すればするほど料金が上がっていきます。
その為、運転手は混雑している道を避け遠回りをして走行するようになるので、混雑緩和や、事故発生のリスクが低くなるという仕組みとなっているのです。

取組み③:他の交通機関の利便性UPで需要の分散へ

シンガポール政府は、MRT、バス、タクシー等の交通機関を充実させ、日常的に使えるよう利便性を上げました。その結果、交通の需要を自家用車から他へ分散させることに成功しています。


写真1:シンガポールのバス


写真2:シンガポールの鉄道、MRT

利便性向上の具体的施策として、日本の交通系ICカードと同様、EZ-Link cardというチャージ式のカードが導入されています。電車とバスで使用ができ、このカードを利用すれば共に初乗り料金が0.77=約62円(1SGDは約80円)と、現金利用の約半額で乗ることができます。
電車の路線も東西南北に張り巡らされていて、どこに行くにも便利です。チャンギ国際空港から中心地に位置するチャイナタウンまでは1時間程、約SGD1.75=140円で行けます(参考サイト1・2)。

広く多くの人が使っているタクシーにおいては、スマートフォンにアプリケーションを入れておけば、ボタン一つで簡単に呼ぶことができ、空港から中心地まで30分程、SGD20ドル~40ドルほどで行くことが可能です。

渋滞を避けることが国の発展のキーポイント

独自の天然資源をもたないシンガポールは、外から運んできた資源や人的リソースを効率よく動かしビジネスを活性化させることが、国の発展のための重要なポイントとなっています。しかし、シンガポールは国土が小さい場所に多くの人が住んでいるため人口密度が高く、それにより引き起こされる渋滞が問題となっていました。その為、渋滞を避けて交通を流すことを国策としてこれらの取組みをしてきたのです。そして政府の狙い通り、このインフラを整えるという視点は、人々の生活においても、ビジネスとしても国の繁栄に寄与してきました。

斬新、かつ効率的に組み立てられたシステムを政府主導で徹底的に導入し、広く一般に浸透させて経済発展へと結びつける。その大胆でスピーディーな行動のおかげで外国企業もどんどん参入しやすくなり、シンガポールは国際都市と評価されることになったわけですが、その行動力は、私達日本人が学べるところかもしれません。

資料:

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