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カリダス 第5話
<日本の学園ドラマとの出会い>

お昼過ぎに授業が終わり、日本語学校を出た。エレベーターを使う学生も居れば、エレベーターを使わず階段を走る学生も居た。若さって不思議。お金以外は全て有る、例えば時間が有る、そしてどんな事にでも挑戦してみたくなる気持ちが有る、全てが可能に見える。それは若さだろう。5階からエレベーターに乗って降りる友人より早く1階に着くように階段を走るカリダスの目は本当にキラキラしていた。夢がたっぷり詰まっていた。

結局エレベーターで降りた友人には勝てなかったが、明日も挑戦すると言葉を口にした。挑戦があるから、失敗がある。明日も挑戦させてと友人に言う。友人も笑って頷きながら、六本木駅向かった。カリダスはいつも通り、六本木一丁目駅へ向かった。

寄り道を全くせず真っ直ぐに自宅へ帰った。叔父・叔母は仕事のため、外出をしていた。自宅には誰も居なかった。しかし、冷蔵庫には付箋が張られていて、「ご飯はチンして食べてね♡」って書いてあった。それを見てカリダスは涙が出そうになった。優しい叔父・叔母と一緒に居て、異国に居る気持ちを忘れてしまっていた。子供がいなかった事も有り、カリダスの事を自分の息子に様に接していた。

叔母が作ってくれた料理を食べながら、全く分からない日本のテレビをつけた。学校の先生が、「移動する際や自宅にいる際は好きなラジオや好きなドラマを観たらどう? そうすればきっと日本語が早く上達すると思う」と言ったからだろう。自宅に帰ってテレビをつけていたが、案の定全く意味は分からなかった。

そしてどうせ意味が分からないから、全く分からない日本のドラマを観たくなったようで、日本の学校や日本人学生について学べるⅮⅤⅮをレンタルしに近くのレンタルショップにいく。選んだのはⅮⅤⅮ「3年B組金八先生」だった。なぜそのⅮⅤⅮを選んだのかは分からない(笑)。観たかった日本の学園ドラマのⅮⅤⅮと偶然出会った。彼は何かを持ってい居るのかもしれない。

そして速足で自宅へ戻り、早速テレビをつけた。いよいよ日本のドラマ「3年B組金八先生」が始まる。観たかった学園ドラマだったからだろう。全く意味が分からなくても、凄く理解しているような表情しながら集中して観ていた。

夕方には叔母も帰って来た。そして凄く集中してテレビを観ていたカリダスに「ただいま。何を観ているの?分かるの?」と質問された。ドラマのタイトルは漢字で書かれており読めず、「スクールドラマです」と答えた。叔母は笑いながら、違うでしょ。「3年B組金八先生」でしょ、学ぶ事が沢山有ると思うから集中して観ると良いよと言った。

分からない所は叔母に教えて貰いながら、二人で一緒に「3年B組金八先生」を観る事にした。「3年B組金八先生」に自分がネパールで経験した様な学校の風景を発見する。ネパールで過ごした日々が目に浮かぶようだ。「国が違っても、先生はいつも一所懸命に生徒に教えようとするんだな。。」と二人で会話していた。そして、偶然にも坂本金八先生は自分のネパールのマーダブ先生と凄く似ていて、カリダスは本当にびっくりしていた。しかしネパールの先生と坂本金八先生の教え方は全く違った。

ドラマの中で坂本金八先生は、担当する3年B組のクラスのみんなにこんな事を言っていた。
「お前ら、西郷隆盛を知っているか? この西郷隆盛の身長は? そして坂本龍馬の身長と体重は?」。
授業を始める前に日本の歴史に大きな影響を与えた二人を紹介していたのだ。しかも学生が興味を持つような質問から授業を始めていた。ドラマ観た後に、ネパールの学校もこの教え方を真似するべきかもしれないとカリダスと叔母が会話していた。

「確かに、学生の立場に立って、分かりやすく授業を進めることは大事かもね。教科書に書いている事と違った事も」
延々と二人のこんなような事を口にしながら、会話をし続けた。

そして、ドラマの残りは別の日に観る事にし、二人はカリダスのアルバイトを探しに出かけた。近所のスーパー、居酒屋、喫茶店などを廻った。店舗の外で「アルバイト募集」と書いていないか、かたっぱしから探した。
一先ず全ての店舗の電話番号等をメモして、自宅へ戻って来た。そしてメモして来た全ての店舗へ電話したが、すべての店舗から似たような反応が返って来て、カリダスは本当にショックを受けていた。

すべての店舗に「外国人はお断り」と言われてしまったのである。

(続く)


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