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Relationship ― ミャンマーと日本の『時間軸』を辿る ~ミャンマーとの友好関係の構築・・・東京におけるミャンマー人の「ホームタウン」

リトルヤンゴン高田馬場

今年も1年ご愛読いただきありがとうございます。
年初に今後のミャンマーについて書いていたことを読み直してみると、「行くも地獄、戻るも地獄の国内問題」とかなり際どいタイトルをつけていたことが、本当にシリアスな国内問題(ロヒンギャ問題など)として世界中を巻き込んで今なお燻り続けています。解決には揉めていた時間よりも遥かに長い時間が必要になると考えますが、日本もどんな形であれ、この問題解決の一助となる動きができることを期待したいです。

さて、今回は歴史も少しだけ絡みますが、ミャンマーへ行く前に少しでも雰囲気を感じることができる東京でのスポットのお話をしておきます。
もうご存知の方にはいまさらかもしれませんが、東京におけるミャンマーテイストを感じられる街が高田馬場です。


写真1:高田馬場駅前の風景

「リトルヤンゴン」などと高田馬場が言われるようになったのは恐らく2000年代前半だったと思いますが、そもそもミャンマー人は1990年代、実は西武新宿線の中井駅周辺に住む人が多かったそうです。
同国出身の仏教の僧侶がいて、彼の営む寺院がコミュニティーの核になっていたということなのですが、時を経るとともに便利な高田馬場に移ってきました。

そこでミャンマーの食材や雑貨、日用品などを販売するお店が高田馬場の雑居ビルで開業するようになり、それに伴いミャンマー料理店などもこの場所に集まってきて、今では料理店だけでも二十数店舗がひしめいている状態となっています。ある料理店は、テレビ東京で放映されたドラマ『孤独のグルメSEASON6』にも紹介されたこともあります。

2015年の統計になりますが、高田馬場がある新宿区のミャンマー人の人口は約1500人で、これは3年前の統計の約1.5倍であり、その後も増加の傾向にあるといわれています。この増加の背景はいくつかありますが、交通の便が良く家賃が比較的安いことや、外国人にも家を貸してくれる家主が多いこと、そして2011年3月31日の「民主化宣言」ではないかと思います。

経済成長とともに人の移動が緩和され、現地から親族や留学生などが日本に来やすくなったということでしょう。最近では高田馬場に限らず、ミャンマー人の居住地は池袋や巣鴨、大塚、下落合等と広がっており、ミャンマーの食材を買いに高田馬場へ足を運ぶというミャンマー人も多くいるそうです。

高田馬場のもう一つの「顔」

ミャンマーの雰囲気を感じられる街である高田馬場ですが、この街にはミャンマーに関してもう一つの「顔」が存在します。
それはミャンマーからの「難民」という一面です。


写真2:1988年8月8日デモの様子

現在ミャンマーの「難民」というと、「ロヒンギャ」のことが取り沙汰されていますが、そもそものミャンマーからの難民といえば、1988年をピークとする大規模反政府デモによる政治難民の人々を指しています。日本が国連難民条約を批准した1982年以降、難民認定をした人数は688人(法務省発表の平成28年度までの統計値換算)で、その大部分をミャンマー人が占めていると言われており、そのほとんどが高田馬場に住んでいます。

1962年にミャンマー(当時ビルマ)でかつてBIAの一員であったネ・ウィン将軍が軍事クーデターを実行して政権を奪取、長きに亘って社会主義的国家統治を行っていたのですが、度重なる行政、経済の政策の失敗を機に学生を中心とする民衆の大規模デモが多発して国内が混乱、1988年の大規模反政府デモ(8888運動)が決定打となってネ・ウィンは失脚をすることになります。

このとき学生デモの中心となって活動していた人々が当局の逮捕を逃れるために国外へ逃亡し、タイに一時避難した後で日本を選択した人々は政治難民としてこの地に渡ってくることになります。当時学生としてデモに参加し1991年に難民として日本へ渡った方の話では、民主化宣言そしてNLD政権誕生の現在でも、本国へ帰還するミャンマー難民は非常に少ないということです。
あれから約30年の歳月が流れ、家族や自分の生活基盤が日本に根付いているため、いくら国への郷愁が募ったとしても、日本での生活をリセットしてまで国に帰るというのは難しいという、現実的な選択を取らざるを得ないのは必然ともいえます。

ただ、難民の方々にとっては日本のあらゆる魅力はわかっていても総合的に考えれば「本国から遠い国」であると思います。その遠い国において本国の事を気に掛けながら生活してる人々がいることを、高田馬場に行くと私たちはふと気付くことができるかもしれません。

とはいえ、難民問題というシリアスな問題だけにとらわれず、単純に「ミャンマー料理って何?」くらいの感覚で皆さんにも高田馬場に訪れてみて欲しいです。今回は公平を期すために具体的な店名を挙げていませんが、ミャンマー料理といってもスタンダードなビルマ族の料理から、コアな少数民族であるカチン族やシャン族の料理などまで、色々味わうことができますよ。

(続く)

資料:

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