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Our World through Music~
甘い音と巡る世界の響き~Vol.24

歴史を超えたコラボレーション

新型コロナウィルスの影響が大きくなってきた昨今ですが、これをお読みの皆さまはお元気でお過ごしでしょうか。今まで、主に一人の作曲家について取り上げてきたこの連載ですが、今回は趣向を変えてお伝えしたいと思います。それは、音楽家の「コラボレーション」について。

コラボレーション。Googleで意味を調べると、「共同で行う作業や制作のこと」と出ます。
そう、元々の意味は一緒に作業を行うことからきているのですが、ここでは広義の意味合いとして「歴史を超えたコラボレーション」に注目します。

まず、ご紹介するのは、歴史的大作曲家と大ピアニストによるコラボレーション。ベートーヴェンの交響曲を、フランツ・リストがピアノソロ用にアレンジしました。あのオーケストラ曲をピアノソロで!?と驚いてしまいますが、これもなかなか良い出来なのです。

リスト編曲によるベートーヴェンの交響曲ピアノソロ版をお聴きください。この動画のちょうど31:37のところからが華やかで聴きやすいです。

演奏は、シプリアン・カツァリス。フランス人の名ピアニストです。彼はこのリスト版ベートーヴェン交響曲の全曲(あの第九まで!)の録音で有名です。
私も始めて音大の図書館でこの録音を見つけたとき、驚愕しながら聴き込んだのでした。想像するだに恐ろしい超絶技巧です!

では、同じ曲のオーケストラをどうぞ。もちろん、これが原曲ですね。

リストという人は、これまでにご紹介したショパンラフマニノフのように、歴史的な腕前をもつピアニストでもあり作曲家でもあるのですが、実はベートーヴェンの直弟子であったツェルニーにピアノを学んでいます。ピアノを習ったことがある人ならこの名に見覚えがあるのではないでしょうか?

さて、お次はこれも大作です。
まず、原曲をお聴き下さい。
ムソルグスキー作曲『展覧会の絵』です。

ムソルグスキーはロシアの作曲家で、友人の画家の逝去にあたりこの曲を書きました。これは、亡くなった画家の展覧会が開かれ、ムソルグスキー自身がそれを鑑賞したときの印象を元にしてあるのだそうです。静かでありながら壮大なテーマ、そして各絵の印象。クラシック音楽とは思えないような面白さが溢れています。このテーマは絵から絵へと歩いていく間も表しています。

この曲を、フランスのラヴェルがオーケストラへと編曲しました。

いかがでしょう、元の曲の良さが更に引き立つこの編曲。ラヴェルはピアノ作品も素晴らしいですが、管弦楽法においても魔術師と言われるほどの天才技を見せています。私もオーケストラでこの作品を演奏したときには鳥肌が立ちました。

最後にご紹介するのは、原曲も編曲もこの上なく有名な二曲です。
一つは、グノーの『アヴェ・マリア』。

これの原曲をお聴き下さい。

どちらもあまりに素晴らしいので、何も言うことができません。バロックの巨匠バッハ、1世紀あとのフランスのグノー。なんと美しい音楽が産まれたことでしょう。

そして、同じくバッハによるこちらの名曲。
管弦楽組曲第3番より『エア』です。この動画の9:16からお聴き下さい。

これを、名ヴァイオリニストが素晴らしいヴァイオリンソロへと編曲しました。

編曲したのは、19世紀ドイツのヴァイオリニスト、ウィルへルミです。
編曲後のタイトルは『G線上のアリア』。そう、ヴァイオリンの一番低いG線だけで演奏します。私も今まで数えられないくらいどちらも演奏してきましたが、弾くたびに新鮮で神聖な気持ちになります。

では、現代を生きる音楽家の「コラボレーション」として私の動画をご覧下さい。ジャンルを越え、格好良いロック曲をヴァイオリン一本で演奏できるようにアレンジしました。

今回は、「歴史を超えたコラボレーション」と題して有名な編曲作品をご紹介しました。どの作品にも共通することは、作曲家による敬愛の心が伝わってくるということだと思います。作曲家というものは、当時も今も不安定な職業であることは変わりありません。そんな中、手をかけた作品。偶然の産物だったり、報酬が良かったり、産まれた背景は様々ですが、それでも元の曲への想いが新たな作品へと繋がったことは変わりないでしょう。
願わくば、こういった素晴らしいコラボレーションがこれからも続いていきますように。そして、これをお読みの皆さまのご健康とご無事をお祈りしております。

写真:
動画:

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