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食から読み解く中央アジア
第7章 イスラームの食文化

7世紀前半、西アジアのメッカに興ったイスラームは急速に勢力を拡大しました。8世紀半ばにはアラブ=イスラーム帝国が中央アジアを勢力圏とし、この地にイスラームがもたらされました。

それまで、この地はペルシアのゾロアスター教マニ教、あるいは仏教の世界でした。アラブがこの地に留まったのは短い期間でしたが、イスラームはその後の中央アジアに強い影響を残しました。

まず、シャリーア(イスラーム法)に基づく様々な習慣です。豚肉を忌避することや、飲酒の制限などが挙げられます。また、右手の指先だけで食事をするという指食文化や、床にカーペットを敷き、座して食事を摂るスタイルもイスラーム文化で共有されるものです。

さて、イスラーム世界で良く見られる料理としては、ケバブ(焼肉)が挙げられます。現在よく耳にする、シシュ・ケバブあるいはシシカバブという言葉は、シシュがトルコ語で「串」、ケバブがアラビア語などで「焼く」ことを意味し、つまり串焼肉のことです。ただし、旧ソ連の影響下にあった中央アジアではシシュ・ケバブやシシカバブより、ロシア語の「シャシルィク」という呼び方が一般的です。

この「ケバブ」を語源とする料理は、中央アジア以外にも、南アジア、西アジア、東トルキスタン、さらにバルカン半島など、広い範囲で見ることができます。これらはイスラーム文化が大きな影響を及ぼした地域と一致します。

中央アジアでは、バザールなどにおいて、炭火でシャシルィクを焼く光景をしばしば見ることができます。美味しそうな香りに思わず足を止めてしまうこともあるのですが、これは、長さ30~40cm程度の金串に5㎝四方の羊肉の角切り、あるいはミンチにした肉を刺し、焼いて作られるものです。日本の焼き鳥やつくねに似ていて親近感があります。カスピ海の沿岸などでは、チョウザメなどの魚が使われることもあるようです。

イスラーム世界はとても広い地域に渡るため、だからこそ、ケバブなどのように様々な場所で食べることができる料理があるのです。食文化を探訪する上でこれはとても興味深いことの一つです。

このほかにも、イスラーム文化に共通する食べ物はいくつかあるのですが、特徴的なものとして砂糖を使ったお菓子類があります。イスラーム世界では飲酒が忌避される一方で甘いお菓子が発達しました。中央アジアにおけるお菓子については章を改めて紹介したいと思います。

写真:
「シャシルィク」著者撮影

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