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食から読み解く中央アジア
第4章 ペルシアから伝わった食文化②

第1章で中央アジアは、トルキスタン、すなわちテュルク系民族の世界であると述べましたが、テュルク系遊牧民族が中央アジアに到来する以前は、ソグド人などペルシア(イラン)系定住民族の世界でした。

ソグド人は、オアシス農耕とシルクロードの交易を生業とし、隣接するペルシアと文化を共有していました。前章で紹介したナウルーズに見られるようにペルシア文化は、中央アジアの基層文化となっていると言えます。

前回、ナンを紹介しましたが、タンドール(土窯)で焼かれるものに、サムサ(パイ)があります。小麦粉の皮に挽肉やカボチャやホウレンソウといった野菜などの餡を入れ、半月型や三角形に包んで焼かれるものです。

サムサ(パイ)

もともとは、サンブーサ(三角形)という意味のペルシア語に由来する食べ物で、南アジアでもサモサと呼ばれる食べ物として存在するのでご存知の方もいるのではないでしょうか。サムサは、手軽なスナック食品として食べられています。

一方、ペルシア起源の米の料理としては、プロフ(炊き込みご飯)が挙げられます。プロフは羊や牛肉の細切れと、タマネギ、ニンジン、干しブドウなどを米と一緒に油で炊き上げた料理です。

プロフに類似する炊き込みご飯はペルシアや西アジアで共通する米の調理法です。中央アジアでも特に稲作が盛んなフェルガナ盆地やアム・ダリア川、シル・ダリア川、ザラフシャン川沿いのオアシス地帯でよく作られています。

味は、主に塩のほかクミンで香り付けがされているのが特徴的です。プロフは、新年やラマダン(断食月)明けなどの祝祭日、あるいは慶弔時に客人をもてなすご馳走として作られています。

これら、ペルシアを起源とする料理は中央アジアの食文化の基層として今に伝えられていると言えましょう。

写真:
「サムサ」著者撮影

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