国際都市シンガポールには2種類の英語がある
今回はシンガポールの英語についてお話しします。シンガポールには2種類の英語が存在し、一般的にはシングリッシュという独特な英語が有名です。しかし、ビジネスの視点で見てみると、シンガポールが経済成長を遂げ、国際都市へと押し上げた別の英語事情が見えてきます。
独特なシンガポール英語、シングリッシュとは?
タクシーの運転手に「マリーナベイサンズまで行って下さい。」と綺麗な英語で話しかけると、「Can」だけの返答が返ってくる。文法もイントネーションも私達日本人が勉強した英語とは何だか違う。少し不安を覚えますが、ちゃんとマリーナベイサンズまで向かうことができます。これでコミュニケーションは成立しているのです。
シンガポールに旅行したことがある人は、このシングリッシュに触れた機会があるかもしれません。シングリッシュとは、英語に中国語の文法、イントネーションを混合したシンガポール特有の英語です。上記のタクシーにおける会話のように、主に生活の場面で、現地の人と話をするときに出会えます。
実際にとても面白くシングリッシュを紹介している動画があるのでご覧ください。
シンガポールの英語、シングリッシュを体験して頂けたでしょうか?機会があればぜひ、この動画のシーンであるような、現地のフードコート等でシンガポール料理と一緒に、シングリッシュにも触れてみて下さい。
ビジネスシーンで使われる英語?
さて、ビジネスの場面でのシンガポール英語はどうなのでしょうか?
1965年独立を余儀なくされたシンガポールが国の発展のためにとった戦略は、『外国人を招き入れて、外貨を流入させることで国を発展させること』でした。では外国人を意識したこの戦略を推進させるため、シンガポール政府はどのような取組をしているのでしょうか?ここからはビジネスシーンにおけるシンガポールの英語についてお話していきます。
シンガポールの公用語は、英語、中国語ですが、ビジネスの場では英語が主に使われています。もしかしたら、仕事においてもシングリッシュが使用されていると思われていた方もいるかもしれません。たしかに現地の人と仕事をする時は、シングリッシュのイントネーションが出て来ることもありますが、しかし基本はビジネス英語を使用してコミュニケーションを取っています。
政府関係のホームページは、英語がスタンダード
また、政府のホームページは英語対応がなされており、就労ビザの書類を提出する、会社の登記をする等の手続きは英語で行うことができます。
他のアジア諸国では、まだ現地の言語でしか手続きできない中で、シンガポールは外国人を意識して英語環境が整備されているのです。
ここで実際のシンガポール政府サイトをご紹介します。シンガポール経済の中でも大きな役割を果たしているシンガポール経済開発庁のインターネットサイトの対応言語は、英語、中国語だけでなく、日本語、ドイツ語までもが網羅されています。
EDB(シンガポール経済開発庁):https://www.edb.gov.sg/content/edb/ja.html
それ以外の政府関係サイトもわかりやすい、シンプルな英語が主流です。
MINISTRY OF MONPOWER:http://www.mom.gov.sg/
皆さんは、このインターネットサイトを見て何を感じるでしょうか?シンガポールでは中国語と英語どちらも公用語とされているのに、なぜビジネス上では中国語ではなく、英語をスタンダードとしているのか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ちょっと想像してみて下さい。
私達日本人がシンガポールへの海外進出を決めた場合、まず情報を得なければなりません。
その時の一番の障壁はやはり言語ではないでしょうか。インターネット上でたくさんの情報を見つけられるこの時代であっても、必要な情報が現地の言語でしか書かれていなければ外から入ってきた人は理解ができません。
その点シンガポールは建国当初より外国人の視点から考え、この言語の障壁を低くしてきたのです。それが中国語、英語が公用語でありながら、国際基準の英語をビジネススタンダードとしている大きな理由です。
私自身、以前はシンガポールの英語はシングリッシュだけだというイメージを持っていました。実際にシンガポールで就職してみて初めて、シンガポール英語に2つの側面があることを知ったのです。
シンガポールで事業立ち上げに関わる中、登記手続きのステップや、財務申告スケジュールなど会社経営に関する情報を得るために、先程紹介した政府系インターネットサイトやパンフレットなど様々な資料を調べました。その全てが英語で記載されている、それもシンガポール人のみがわかるシングリッシュではなく、世界中誰もが理解できるオーソドックスでシンプルな英語で統一されている徹底さに驚きました。
中国語と英語をミックスし独自の文化として育まれているシングリッシュ。国家政策として外国人を呼び込むためのグローバルスタンダードなビジネス英語。この二つ目の側面を目の当たりにしたことで、何故シンガポールが経済成長を遂げ国際都市になったのかを学んだのでした。そして、みなさんにもぜひ機会があればシンガポール英語の二面性を体験してもらい、シンガポールの国のあり方について実感してもらいたいと思います。
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