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カリダス 第9話
<バスに乗ったら>

テレビ番組や日本の学園ドラマで日本語の勉強していた「カリダス」と一緒に暮らしているからでしょうか。叔母も日本語の勉強をし直したいと言いだした。カリダスの教科書を借り、寝る前に勉強するようになったのだ。まさか叔母が自分の真似をすると思っていなかったので、カリダスはびっくりしていた。

実は叔母はネパールにいた時、叔父と一緒に現地の日本語学校に通っていた。優秀な学生だったそうだ。しかし上京してからは日々のパートで忙しく、日本語を勉強したいのにうまく時間を作れていなかった。そんな時にテレビ番組や学園ドラマを鑑賞しながら、日本語を覚えようとしているカリダスの姿に影響され、再び勉強をしたくなったそうだ。そんな話を聞けてカリダスも喜んでいた。日本に来て数ヶ月しか経っていないないのに、他者に影響を与えることができたとうれしく語っていた。

テレビ鑑賞しながらカリダスは横たわっていたが、いつの間にか寝入ってしまった。次の日は日本語学校の課外授業としてNHKスタジオパーク渋谷に行くことになっていた。

翌日は早起きをし、いつもより早く学校に向かおうとしていたカリダスをみて、朝ごはんぐらい食べて行ったらと叔母に言われた。しかしカリダスはいち早くNHKスタジオパークへ行きたかったので、今日は外で食べますと言い、速足に学校へ向かうのだ。

通学途中にコンビニでパン、紅茶を買い、教室に向かった。先生方は既に学校にいた。あまりにも早く学校に来たカリダスを見て「おはよう、おぉ、早いね!!」と声かけてくれた。

教室内で朝ごはんを食べ、クラスメートと担任の先生全員が揃った後、都営バスで渋谷に向かった。渋谷行バスの後部座席に座り、そしていつも通り人間観察をすることにした。その時、目の前の優先席は空いているのに席に座らない人々を見て不思議に思った。よくよく考えるとそれこそがマナーだったことに気づくのだ。また一つ日本の良さに出会った瞬間だった。

優先席は高齢者、障害者、けが人、体調不良者、妊婦、乳幼児連れのための席であり、健常者が座る席ではないことがわかった。ネパールのバスには日本のように優先席などが設けていないことが多く、いつかネパールもこのようになってくれればなぁと心の中でつぶやくのだ。

そして留学生の自分達と他の乗客を比べ観察していった。外国人はバスの中でよくおしゃべりをしていた。その一方で日本人乗客は静かに携帯をいじってたり、本を読んでたりしていた。知り合い同士も会話せずに携帯と本に夢中だった。その光景を観察し、どちらが良いのかわからないが、他者とコミュニケーションを取ることも重要だよね、他の乗客の迷惑にならない程度であれば、おしゃべりをしてもいいんじゃないと、再び心の中でつぶやいた。そうこう考えているうちに渋谷に到着し、NHKスタジオパークに向かった。

(続く)


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