「中央アジア」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか?どちらかと言うと今まであまり馴染みのない世界なのではないでしょうか。この地域はシルクロード、いわゆるオアシスの道として中国の長安(現在の西安)から砂漠のオアシスを伝い、イタリアのローマまで続いていた道のルートに当たります。
本稿では、中国から天山山脈を越え、さらに西に広がる中央アジアの世界にスポットを当てて、特に食文化を通じてその地域がどのような世界かを見てみたいと思います。
まず、中央アジアに位置するのは、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタンの5カ国です。これらの諸国は1991年のソビエト連邦崩壊と共に独立した新しい国々です。
この地域に共通するのは、イスラーム文化を受容した背景を持つことと、ペルシア系民族が多いタジキスタンを除き、他の国々はテュルク(トルコ)系民族が多数を占めるためにトルキスタンとも呼ばれていることです。現在のトルコとも文化的に繋がりがあります。歴史を遡ると、テュルク系民族とは、モンゴル高原を故地として、南下、西進した民族なのです。
トルコ料理といえば世界三大料理の一つと言われていますが、これは時代や場所を移しながら発達してきました。中央アジアの料理とトルコ料理には共通するものもあります。その一つに中央アジアではプロフ、トルコではピラウという炊き込みご飯があるのですが、この料理は西欧ではピラフと呼ばれ、実は私たち日本人にもお馴染みの洋食でもあります。
中央アジアは、それまで私たちにはあまり知られていない地域であると言えますが、プロフの例から見ても意外にも私たちから遠いものではないと言えるでしょう。
次章では中央アジアの世界をもう少し概観してみようと思います。
- 地図出典:
- 外務省HP「中央アジア~アジアと欧州が出会う場所」
- 写真:
- 「プロフ」著者撮影